聖女の肉

お気に入りの食が専門の人類学者「日下部遼」シリーズの最新刊が出ましたので、いつもどおり購入してみました。

聖女の肉 Book 聖女の肉

著者:和田 はつ子
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

部屋主の独断ランク:D

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

ミドサマー・イヴ(夏至の日)に起きた殺人事件の被害者である少女「智香」は、首を切断され逆さに吊られた状態で発見されました。その死体の胃の中からは、大量のヘロインとともに中世ヨーロッパの祭典で呑まれていた祝杯ラムズ・ウールの原料が発見されました。

翌日、東京湾から上がった車の中にあった死体の胃の中からもラムズ・ウールの材料が発見されます。死体が少女の実の親であったため、事件は親子の無理心中とした処理されようとしていますが、いくつかの疑問点があったので、「日下部」にはしっくりきていませんでした。

それから数日後、日下部は友人である「小倉」に会いにホテルへと足を運びます。しかし彼はすでに殺害されていたのです。そして死体の側には聖スウィズンを奉るアップル・ボビングが置かれていたのです。

山羊の解体に見立てたように殺された智香と、農場主兼料理人として山羊に注目していた小倉。「中世ヨーロッパ」と「山羊」という共通点を持つ2つの殺人事件をなんとか解決したいと試行錯誤している日下部に「小倉の二の舞になりそうだ、助けてくれ」という友人「小柳」からの手紙が届き・・・

部屋主の感想

いつもながら微妙です。食と人類学に関するウンチクが好きで買ってるシリーズですが、いつもよりウンチクが少ない気がします。「隠れキリシタン」などをはじめとした宗教の話がそれなりに出てたのですが、部屋主はその辺りの知識がそれなりにあったのも理由かもですが。

あと、著者自然や食に関する姿勢が好きだったりしますが、そこに関してもいまいちでした。今回はダイエットに関して批判してるのだと思いますがどうにも弱かった気がします。

さらにもう一つの魅力である、残虐な殺害方法ですがこちらも微妙です。いつも通り気色悪い死体の発見からはじまるのですが、残酷シーンはここだけでした。しかも、今までと比べるとそのレベルも低かったですし。他に気持ち悪いシーンを突っ込もうと思えば突っ込めるかと思う箇所もちょこちょこあっただけに少々残念です。

そのくせ、いつもながらの尻すぼみ感はきっちりと健在でして。一応はどんでん返しらしきものも用意されているのですが、これはもちろん完全に予想範囲内という体たらくでした。

「判じ絵」や「かくし絵」を使ったダイイングメッセージもそれでいいのかよってくらいにあっけなかったし。期待した分だけ逆にちょっと凹んでしまいました。

他にも、どうにもご都合主義的な展開も多い気がして・・・いつもならそのご都合主義的な展開も日下部さんの特殊能力の発動などの条件や伏線があったりするのですが、今回はそんな感じも特にせずで。ちょっとそれはきついんじゃないかな的な展開もままありますし。

とはいえ、最初から中盤にかけての謎が謎を呼ぶミステリ的な展開はなかなかに楽しいですし(前半はそれなりにうんちくも多いし)、現代版閉鎖された町を宗教と経済による支配で作り出そうとしたその努力は買いたいと思います(ここの書き込みがどうにも足りずリアリティがないわけですが)。

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鬼婆

毎度ながらの人類学者の日下部さんシリーズの中の一作です。

鬼婆 Book 鬼婆

著者:和田 はつ子
販売元:角川春樹事務所
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部屋主の独断ランク:D

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

食が専門の文化人類学者の「日下部遼」は、勤務先の栄陽女子大の卒業生で「食べることのできる絹」の事業を手がけていて、58歳にして30歳そこそこに見えるという異常な若さを誇る「桜庭京子」から研究の助けを求められます。

日下部の専門である食という観点からの助言と、息子「雅彦」が開発した「若返り効果のある絹」の特許を巡って生じた周囲の人間と軋轢の緩和がその目的ということでした。

腑に落ちないながらも、「人食い鬼女伝説」の残る福島の「養蚕」で栄えた旧家・桜庭家を訪問した日下部は、かつて雅彦が双子の妹である「優美子」の首を絞めるという事件を耳します。

雅彦は事件当時の記憶は一切なく、事件後は蚕の研究に没頭していました。また、優美子の方は事件以来「自閉症」とよく似た何かしらの精神疾患を患うようになっていました。

そんな中、桜庭家に敵対する「矢島」家の行方不明だった5歳の少女「美貴」が、肛門一帯を刃物でこそぎ取られ、無数の蝿の蛹に覆われた状態で発見されるのです。日下部はこれを変質者の犯行として決めつけるのではなく、人肉の薬餌効果を得るための殺人ではないかと主張し・・・

部屋主の感想

かなり微妙といった感じでしょうか。多少ミステリ色はありますが、完全にオカルティックな内容ですね。で、ホラーミステリということですが、怖くはありません。一般的にみて得意のエグい表現が少々ある程度です。とはいえこのエグさも最近は飽き気味です。慣れてきたともいいますがね。

部屋主は蟲系のものにグロさを感じるの人間なので、「蚕」がテーマってところで期待してたのですが、かなり期待外れでした。少女が蝿の蛹にたかられてるところの描写が少々グロいといった程度です。「食人」というテーマもあるのにそれはウンチクだけに留まり、その描写はないですしね。

物語としても盛り上がりに欠けるような気がしますしテンポが妙に悪いです。最初の事件が起こるまで、シルクや蚕や鬼婆伝説のウンチクばかりですし(約260Pの作品で事件発生が110Pくらいから。まぁ部屋主はウンチク好きなのでいいのですがね)、この後妙に中だるみして、200Pを越えたあたりからテンポがよくなり、最終的には尻すぼみとなります(ミステリ好きな方は特にそう感じるかと)。

毎度作品中に盛り込まれていた自然や環境に対する畏敬の念を忘れるべからず的な、部屋主が気に入ってる点も今回は非常に薄いのもマイナスポイントですね。

とはいえ、毎度ながらの「養蚕や蚕信仰の歴史」や「安達ヶ原の鬼婆伝説」、「食人の薬餌効果やその歴史」や「シルクの食品的価値」といった、微妙に知ってることから全く知らない知識を得ることができるのは楽しかったです。物語的には微妙でも、これが楽しみで和田さんの本を読んでるというところが部屋主にはあったりしますから。

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魔神

お気に入りの食が専門の文化人類学者「日下部遼」と女刑事「水野薫」のコンビの物語です。

魔神(まがみ) Book 魔神(まがみ)

著者:和田 はつ子
販売元:角川春樹事務所
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部屋主の独断ランク:D

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

何かを暗示する悪夢にうなされる日々を送っている「日下部」の住むマンションに、人間の焼け焦げた脚の骨と肉の塊が投げ込まれるという事件が発生します。しかもこの脚は生きたまま切断されたという残酷極まりない方法で処理されていたのです。

さらに日下部の近所の神社で白木の箱に入った新生児の遺体が発見されます。さらには生きたまま分解され焼かれ、さらに氷漬けにされていた人間のパーツが日下部のところに送られてきて・・・

部屋主の感想

正直あんまり面白くないです。一応はホラー・ミステリーということですが、残酷というだけでホラーとは思えないですし、ミステリとしてもなんか考えて読むのがだるい感じの作品でした。

「魔神(まがみ)」というタイトルを筆頭に、いまい腑に落ちない設定や展開もけっこうあるので、毒中読後の達成感もないです。というかなんか不快です。

とはいえ、いつも通りの食や民俗学の知識が勉強になりますし、自然や環境への配慮を訴えかけてるといったスタンスは好感がもてます。さらに今回は環境ホルモンや奇形児、虐待についてもつっこんでるので、このへんは評価に値するかと思います。ただまぁ、この本が執筆された当時ダイオキシンがやたらと取り上げられていたからかも知れませんが。

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悪魔のワイン

最近お気に入りの食が専門の人類学者「日下部」助教授シリーズの最新作です。

悪魔のワイン Book 悪魔のワイン

著者:和田 はつ子
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

部屋主の独断ランク:B

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

いつも通り「日下部レストラン(料理好きの日下部が料理をしない水野のために開く食事会の通称)」で食事をしている女刑事「水野」の携帯に事件発生の電話がかかってきます。

五反田でスナックを経営する「山下」という夫婦が殺されたのです。現場には血痕のついたブドウ畑の絵葉書が残されている以外、特に目立ったところはありませんでした。

手がかりがなく捜査が難航する中、与党の大物政治家「大野」と外務省事務次官の「大西」がワインに入った日本には存在しないはずの毒で殺害されます。この現場には謎の植物の種が残されていました。

2つの事件をワインという共通点があることから同一犯の犯行であると「日下部」が主張していた最中、第3の殺人が起こるのです。被害者は製薬会社に勤める「有岡」という男で、なんと頭部が切断されワインで煮込まれていたのです・・・

部屋主の感想

これもいつも通りなかなかに面白いです。本にはホラー・サスペンスと書いてありますが、全く怖くないです。ワイン煮込みは衝撃的ですが、特に描写がリアルってこともなく怖くも気色悪くもなかったのが残念です。

一応はミステリよろしくの犯人が誰かわからない展開があるので、ミステリとしてもそれなりに楽しめます(とはいえトリックがどうのというタイプでありません)。ちなみに部屋主は犯人と動機ともどもバッチリでしたが(←これが言いたいらしい)。

それに加えていつも通りの食のウンチク(今回は主にワインと植物についてですが)が、これまた毎度のごとく勉強になります。ワインの方は、部屋主が下戸なためそんなに興味がありませんでしたが、植物や毒物に関するウンチクはとても面白かったです。

でもって、これまたいつも通りの(部屋主が勝手に思っている)「食」と「自然」というテーマに関しても、いずれやってくる食糧危機といったものを絡めてあるのでポイント高しです。日本人はもっと自分の食べてるものについて考えるべきであるということ思い出させてくれます。

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最近ポイントが下がり気味です。何卒ぽちっとお願いですm(_ _)m

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木乃伊仏

最近ハマってる食が専門の文化人類学者「日下部」助教授のホラーミステリシリーズの中の1作です。なお「木乃伊」は「ミイラ」と読みます。念のため。

木乃伊仏 Book 木乃伊仏

著者:和田 はつ子
販売元:角川春樹事務所
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部屋主の独断ランク:C

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

女刑事「水野薫」は、日本海でクルージング中に、短時間で塩漬けのミイラ状態になり変死した、次期総理候補を父に持つ人気アイドル「黒枝真也」事件捜査のために、友人の文化人類学者「日下部遼」と庄内地方へと向かいます。

何かと古い因習が残る現地では、地元の名士である「相沢庸介」の経営する病院で働く真也の兄「黒枝芳樹」が死体の管理をしていましたが、彼は突然現れ「貴様らに呪いを、罰を。末代まで祟り申し上げる」と言う餓鬼のような男に魅入られ、男の言う「行者寺」へと向かいます。しかし、芳樹は途中で交通事故を起こし、生きてるのが不思議なほどの脳挫傷を負ってしまいます。

代議士である父の権限で呼び出された天才脳外科医「片桐一人」の手術で奇跡の回復を遂げた芳樹ですが、意識を取り戻した彼はかつての人格を失っていました。以来、その地方を支配してきた一族が次々と殺害されていくのです・・・

部屋主の感想

これまた面白いかどうかはちょっと微妙ですね。ホラーミステリーというわりにはまったく怖くないです。ミステリ要素もこれまで読んだ4作品の中で一番低いと思います。というか「これはミステリか?」ってレベルです。

クライマックスにはちゃんとオチも用意されているのですが、それも予想通りで少々ゲンナリします。しかも著者の得意でないと思われる分野からの知識ですので、現実性がかなり欠けてるのですよね。描写もかなり乏しいですし。

以上のような理由で、この作品は物語的にはかなり退屈な部類に入るかと思います。他にも色々と伏線はあるのですが、予想するまでもなくわかりきってることばかりなので、盛り上がるところもないに等しいですしね。

とはいえ、いつも通りの「食に関するウンチク」は相変わらず非常に楽しいですし、「塩と環境」や「木乃伊の歴史」に関するウンチクを物語として作り上げてあるのは流石です。で、これまたいつも通りそこは面白いし勉強になりました。これまたいつも通り「自然」やら「食」やらを大切にといったテーマも健在です。

あと、部屋主個人としましてはラストがツボでしたね。最後の1Pがあるのとないのとで評価がかなりわかれるかと思います。賛否両論かとも思いますが、この終わり方はいいですね。やはりこうでなきゃと思いました。

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多重人格殺人

虫送り」「狼神」に引き続き、食が専門の文化人類学者「日下部遼」が登場する作品の中の1作です。どうやらこれが日下部シリーズの第1作目っぽいです。

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Book 多重人格殺人―サイコキラー

著者:和田 はつ子
販売元:角川書店
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部屋主の独断ランク:B

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

警視庁捜査一課の女キャリア刑事「水野薫」は、ドリルで頭蓋に穴を開けられ脳を取り出されて変死していたモデル志望のOL「結城みちる」の殺人事件を捜査をしています。まず容疑者として浮かべあがってきたのが、みちると交際していた助教授「日下部遼」でした。

日下部を尋問し、彼を犯人ではないと判断した薫は、日下部から聞いた脳を食べるという行為についての話を元に、かつて起きた10歳の少女が脳をえぐりだされ、全身の肉を削ぎ落とされて殺されていた事件とみちるの事件を結び付けます。

また、日下部の証言からは、みちるが死ぬ前にモデルとしての仕事をしていたことがわかり、薫は日下部とともにその撮影を行った、かつて一世を風靡したSM写真家の「朝倉文丈」の元を訪れます。しかし、朝倉の証言からは特に収穫は得られませんでした。

そんな中、有名な漫画家「三橋みどり」が、同じように脳を奪われた死体として発見されるのです・・・

部屋主の感想

まず、全体的な評価としては微妙です。それなりにミステリっぽい形式は取ってますが、さほどでもないです。ホラーとしても怖くはないです。じゃあ何系?と問われるとグロい系かと思います(あらすじにはサイコスリラーと書いてあります)。

物語としても盛り上がりに欠けてると思います。な~んかだらだらしてる印象を受けました。被害者の共通点を見つけ、犯人を追う過程は面白いのですが、犯人が丸わかりなのはいただけません。犯人を追うタイプのミステリではなく、犯人の動機と被害者の共通点を追うタイプのミステリだとは思うことは思うのですがやっぱりねぇ。

でもって、何より気に食わないのがタイトルの「多重人格」です。どこにも多重人格のようなキャラは存在しません。いったいこのタイトルはなんなんでしょうか。不思議です。これが執筆された当時(1996年くらい)に、こういう系統が流行していたからという単純な理由でしょうか。もしそうならなおさらゲンナリです。とはいえ当時からそれにハマち続けてる部屋主だったりしますが。

と、ここまで批判してきましたが、相変わらずの食に関するウンチクは非常に楽しいですし、「飢饉の歴史」や「食肉の歴史」、そして「カニバリズム」を物語として練りこんであるあたりは流石です。面白い上、とても勉強になりました。

あと、この作品の時点では、水野と日下部のどちらが主人公であるかは決めかねているように感じました。部屋主個人としては水野が主人公のような印象をうけましたしね。別のシリーズを読まずに、最初にこの作品を読んでいたら、きっと部屋主は日下部を犯人候補として読んでると思います。

この本から部屋主が選ぶ格言

「家族、家庭の無理解。愛情の欠如。私は自然の放棄は家庭の崩壊につながるものだと思います。その意味では当たり前の家庭、情愛の象徴である食生活も今、きしみはじめていると考えています。ビジネスマンもキャリア女性もパートの主婦までも仕事、仕事。金、金、金。そして皆テイクアウトやグルメ料理に飛びつき群がり、人間の糧であり源である日々の食をないがしろにしているそんな家庭や生活は残骸に過ぎませんよ」by日下部遼

シリーズを通してのテーマかと思われる「自然」と「」に関する日下部の思想が感じられる台詞かと思います。シリーズを通して彼の台詞を読んでると、自身の食生活を見直して、自然に対して感謝せねばと思ってしまいます。ここを見てくれてる皆様も1度、自分の食生活と自然をどう捉えているかを考えてみることをオススメします。

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狼神

先日読んだ「虫送り」が面白かったのと、同じ主人公の作品ということで購入してみました。

狼神 Book 狼神

著者:和田 はつ子
販売元:角川春樹事務所
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部屋主の独断ランク:B

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

アイヌのシャーマンの血を引く人類学者「日下部遼」は、埼玉の山間部にある私立高校の養護教諭「望月麻子」から、「学校の裏から発掘された狼らしき動物の骨と、女神像の鑑定する」という「保健室登校生徒のイベント」のために招かれることになります。

イベントの参加メンバーである6人の生徒と顔合わせをし、校内を案内されていた日下部は、食堂で50㎏を超える生肉が紛失した事件と遭遇します。とはいえ、この時点ではただの窃盗事件なので、メンバーは保健室でイベントの打ち合わせを開始します。

その途中、いつもは中の悪い3人の教師が、大きなマスクをつけ大量の水を飲みながら、「異常なスピードで感染し、潜伏期間なしで発病し、高熱と過度の脱水症状を引き起こす原因不明の感染症が発生したため、この学校を封鎖、隔離した」ことなどを伝えにきたのです。

この説明を不審に思いつつも、事態打開のために開かれている職員会議に望月も参加することになります。1人で大丈夫かと思ったメンバーは、こっそりその後をつけていきます。

そこで彼らが見たものは、3人の教師に取り押さえられ、マスクの下から出てきた白い息によって抵抗する力を奪われた望月の姿だったのです。

そして、何かによって一気に支配された学校を舞台に、なぜか感染から逃れたメンバーたちに、次々と感染者が襲い掛かってくるのです・・・

部屋主の感想

いやぁ、この作品もなかなかに面白いですね。閉鎖された空間で周りが次々と敵になり、味方も信用できなくなり、逃げながらも反撃を考えて・・・っていう、こんな設定大好きなのですよ。

こういう物語は、もし自分がこんな環境に置かれてたらって考えながらいつも読んでいます(基本的にはどんな小説もそうしますが、こういう好きな設定だと気分が乗るのです)。で、それが楽しくて楽しくてたまらないのです。

前の「虫送り」同様、多少強引な終わり方がするものの、この手の話はそういう感じ以外の終わり方はちょっと無理っぽいので許容範囲です。ご都合主義的な生徒の設定や、感染者と戦うための武器の設定、わかりやすすぎるボスとかはけっこうゲンナリしますがね。

なんて考えながら上のアマゾンのリンクを貼る時についでにレビューを見ると、評価の☆は1つで、「パラサイト」の文字が・・・

そうだ、どこかで聞いた事あるような設定や物語だと思ったら、驚くほど映画「パラサイト」と同じなのです。意識して映画との共通点を考えると(映画のパラサイトも大好きな作品で何度も見てたりします)びっくりするほどそっくりです。「パクリ」と言われても仕方ないほどに。というかこりゃパクリです。

とはいえ、今回も色々な民俗学の知識が散りばめられていてとても勉強になるあたりは評価できますね。でもって、これまた「虫送り」同様「自然との共存共栄」や「コンプレックスとそれに正面から向き合う」といったメッセージ(もちろん部屋主が勝手に受け取っただけかもしてませんが)も部屋主にとってはポイント高しです。

あと、肝心の恐怖度ですが、本裏にもあるように「ホラーサスペンス」なので全く怖くはないです。

でも、プロローグとクライマックスに出てくるとある場面はけっこうキテます。映像化すると発禁くらう可能性もあるくらいのレベルです。ですので最初だけでも立ち読みしてみてくださいね。

まだ和田さんの著作を読むのは今回で2作目ですが、最初に一番ショッキングなシーンをもってきて読者を引き込むというタイプの人なのかな?まぁ、また別の作品をチェックですね。日下部先生はシリーズものが他にもいっぱいあるようなので。

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虫送り

先日読んだ「」の中に、このタイトルと同じ言葉が出てきていたので気になったのと、あらすじに大好きな分野である「バイオ・ホラー」という字があったので購入してみました。

Cimg2028題:虫送り

著者:和田はつ子

発行年:平成12年

部屋主の独断ランク:A

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

進学校に通う優等生「佐竹まゆ子」は、息苦しいその環境から逃れるべく、大好きな蝶を見るために黙って北海道へと旅立ちます。そこで彼女は端正な顔立ちの男に騙され睡眠薬を飲まされてしまいます。

気がついたまゆ子は地下室に閉じ込められており、椅子に四肢をピアノ線で拘束されてしまいました。次に、男は部屋の電気を消し、無数の虫を解放するのです。そして、解き放たれた虫たちはまゆ子の体を喰い荒らしていくのです・・・

アイヌのシャーマンの血をひく文化人類学者「日下部遼」は、アイヌの食文化研究のためと、友人のキャリア刑事「水野薫」の北海道で発生している連続失踪事件の調査のため北海道・井戸無村に滞在しています。村では、生物農薬とし産みだされたテントウムシやそのフンを主食にするアリが、密かに異常繁殖をはじめていました。

日下部が資料を見せてもらう喜多川家は、テントウムシによる害虫駆除に反対していている祖父達三、村で医者を営む孫の諒子、諒子の腹違いの妹で何かと問題児の翔子の3人暮らしです。

ある日、達三は、村にテントウムシをもたらしほとんどの村民からは感謝されている速見と喧嘩をを起こしてしまいます。翌日、何かとコンプレックスのある速見は前日のこともあり、衝動的に翔子の首を絞めてしまいます。

達三がすぐ発見したこともあり、特に問題はなかったはずなのですが、その夜から翔子は食欲が突然旺盛になったりと、嗜好が変わっていくのでした

一方、村では虫の増加という現象に疑問を持ち始めた人々が次々と変死しはじめるのです・・・

部屋主の感想

きました!これは面白いです!怖いというよりは気色悪いです。虫による惨殺シーンや、解剖した死体から虫がわらわらと出てくるシーンなど、想像するとかなり気持ち悪いです。でもそれがいいです。是非とも映像化希望です!

虫嫌いな人は多いと思いますが、そういう人こそ読んでみてください。おそらくその日はうなされると思いますから。

少々、流れ的には邪魔かと思う縄文やアイヌの食についての話は、けっこう楽しめますし、物語に厚みを出しています。にしてもよく色々と調べたもんだと感心します。勉強になりました。

多少の中だるみやあんまりいらないんじゃないの?っていうエロシーンもありますが、けっこうサクサクと読めます。しょっぱなから、ショッキングな惨殺シーンを入れて読者を引き込むという憎い演出のおかげかと(虫好きな人も嫌いな人もとりあえず最初だけでも読んでみて)。

ラストの尻すぼみ感はやはりありますが、これはまぁ内容的に考えてある程度仕方ないかと思うので許容範囲内です(というかならざるを得ないかとも。あと、こういう風な終わり方のパターンも好きなので)。

あと、アリがけっこうメインとして登場するのですが、部屋主は毎年アリに襲われているので、いつかホラー小説を書くときにテーマに・・・なんて考えていたのですが、先にやられていたので少々凹みました。

でもって、さらに生物の進化という(他にも自然との共存とかもテーマかと)、これまた部屋主が小説を書くときは盛り込みたいと考えていたテーマ(「瀬名秀明」さんの影響です)も入っているし、部屋主が多少学んできた人類学や民俗学も入っているしで、これまたとても悔しいです。

でも、自分の目をつけていたテーマが、こうやって面白い作品として出来上がってるのは逆にとても嬉しかったりもしますね。あくまで目をつけていただけで面白い作品ができるなんて保障はないわけですし(というか書くかどうかがまず不明。部屋主の場合、いつも考えて終わるだけだし)。

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