H5N1 強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ
相変わらずこの手のハマってます。国立感染症研究所研究員が著者というのが非常に気になったので購入してみました。
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H5N1―強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ 著者:岡田晴恵 部屋主の独断ランク:B |
多少ネタバレ注意です。
あらすじらしきもの
大阪府立R市立S病院副院長に新しく就任した感染症内科の専門医「沢田 弘」は、その順風満帆な人生とは逆に、夜な夜な襲い掛かってくる悪夢に悩まされていました。
その悪夢は、日本で強毒性インフルエンザがパンデミック(大流行)し、感染症指定医療機関である自分の勤める病院に患者が押し寄せてくるというものです。
沢田は悪夢の元を解決するため、医学部時代の同窓会を機会に、様々な現場でそれぞれに活躍している同窓生たちに、強毒性インフルエンザ対策の相談を試みます。
しかし誰も彼の悩みへの答えを持ってはいませんでした。
だた、この会合をきっかけに、それぞれがそれぞれの方法で強毒性インフルエンザ対策に動き始めます。
そんなある日、インドネシア近海のとある島で、強毒性インフルエンザに感染した患者が発見されます。
ただちに日本でも警戒態勢が引かれるのですが・・・
部屋主の感想
もし強毒性インフルエンザが流行したら…というフィクション小説です。
内容は小説の形を借りた強毒性インフルエンザへの啓蒙と思われます。なのでかどうかは不明ですが、物語としての面白しみはあまりないです。
ですが、国立感染症研究所研究員が書いてるだけあって、そのリアリティはさすがでした。
そしてなにより実に勉強になりました。
医療機関の対応、薬の備蓄、病気の広がり方など、そして部屋主が全く意識していなかった死体の処理なんかにも言及されてるあたり、ほんと感心しました。
また、企業(職場)やお店(食料品店)、一般市民の対応などについてももちろん書かれているあたりもさすがです。
それにしても、「飛沫感染」に「空気感染」、しかも「致死率が60%」を超えるインフルエンザがこの物語のように大流行するなったらと想像すると・・・洒落にならないほど怖いですよ、ほんと。
強毒性インフルエンザは、「サイトカインストーム:免疫の過剰反応」を引き起こすのでお年寄りよりも若者にダメージを与えるあたりもさらに恐ろしいです。
以前に紹介した「ホット・ゾーン上」「ホット・ゾーン下」の「エボラ出血熱」よりもはるかに恐ろしいのではと思います。
なお、強毒性インフルエンザが日本で流行した場合の想定死者数は210万人以上ということです。
発生してしまった、インフルエンザウイルスはこれまでの紹介してきたウイルス同様、というかそれ以上にどうしようもないように感じました。
なので「知識と危機感の共有」、「まだ発生しない病気に対する危機管理への理解」、「感染症の怖さ対する意識レベルをあげる」ことなどによる「事前準備対策によるリスク管理」が必要だとつくづく感じました。
ここを読んでくれている皆様も、是非ともこの本を読んで事前対策をしっかりしておいておくれであります。
と、リスク管理のことを考えると当たり前といえば当たり前なのかもだけれど、タミフルの備蓄などについても言及ががあるので、製薬会社と裏でよろしくやっているのでは・・・と思ってしまった面もあったりです。
この辺りの効果についてなどは正直、部屋主レベルの知識と情報量ではよくわからないので、邪推に過ぎないことを祈ります。
この本から部屋主が選ぶ格言
「見ないこと、知らないことは、なかったことと同じことになる。せっかくある情報を活用しなければもったいない」
活用になってるかどうかはあれですが、このブログで常々訴えかけたいと思っています。
「何しろ、インフルエンザの潜伏期間は3日、そして発症する前日からもウイルスを排出するのだ。姿の見えないウイルスという敵が、いまや獲物を捕らえんと、この空気中を漂い、待ちかまえているのだ。そしてまた、その事実を知らず、思ってもいない間に感染し、対内にウイルスを潜りこませて倦怠感など、症状の出ている患者以外は、検疫でも引っかからない。さらに入国の際にも、症状が出る前ならば、ウイルスの入国をなんら阻止する方法はないのだ。そう、新型インフルエンザに国境はないのだ」
で、気づいた時にはもう遅いと。さて皆様、どうします?これは数日先のことかもしれませんよ。
「日本でこの種のウイルス株から作られるワクチンが市場に出回るのは安全確認やその他の過程を経て、早くとも半年後、2007年3つきの厚生労働省の新型インフルエンザ対策のガイドラインでは1年後からとされている。しかもその供給量は、国民全員分なのあり得ない状況なのだ」
それまで国民はひきこもって生き延びねばということです。あとがきによるとこの本を執筆中にさらに悪いデータ(備蓄ワクチンの配布がこの小説の段階よりさらに一ヶ月は伸びる)が出たらしいです。
「さらに日本人の間には、病気を押して仕事をすることを美徳とする感覚が残っている。実際には、職場にウイルスをまき散らし、仲間に感染を拡げることになるので、非常に迷惑な行為なのだが」
なのです。無理はいかんであります。
「普段からいろいろな予防接種の仕事をしていて感じていたことですが、準備されたワクチンが使われずに残った時、日本人はなんでこんな無駄をしたんだって、そういう世論が必ず出るでしょう、しかしね、使わずに済んで良かったというのが本当で、欧米ではそう国民は感じるんですよ。感染症対策は、命の危機管理ですから」
と思えればいいんですけどね。そう思いたくても、役人どもがそれにかこつけて何か悪さをしてしまうと考えてしまうんですよね。どうしたものかです。
「新型インフルエンザウイルスは、検疫で止められるような甘いウイルスなんかじゃなかったのだ。つまり、発生すれば、すぐにも入ってくるということを“想定”した対策をやっておくことが肝心だったのだ」
インフルエンザウイルスの恐ろしさと対策についての巧みに表現している一言かとおもいます。皆様の記憶に残してもらえれば幸いです。
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