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氷点 上

年末から読んでる「氷点」シリーズですがようやく読了しました。

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Book 氷点 (〔正〕 上)

著者:三浦 綾子
販売元:角川書店
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部屋主の独断ランク:B

   作品全体ランク:

多少ネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

昭和21年7月21日、夏祭りの昼下がり、辻口病院院長夫人「辻口夏枝」は、青年眼科医「村井靖夫」と、自宅の応接室で向き合っていました。村井の手が夏枝の肩へと伸びます。抵抗しながらもまんざらでない夏枝。

そんな時、3歳になったばかりの夏枝の娘「ルリ子」が応接室へと入ってきました。夏枝は慌ててルリ子を外へと出そうとします。「おかあちゃまも嫌い」、そう言ってルリ子は1人で出て行きました。その後、夏枝と村井は互いにすれ違い、村井は帰っていくことになります。

物静かで優しく信頼できる夫「辻口敬造」が帰宅し、夜になってもルリ子は戻ってきません。翌朝、河原で発見されたルリ子は無残にも扼殺されていました・・・

犯人は「佐石土雄」。苦痛ばかりの人生に疲れきっていた佐石は、たまたま出会ったルリ子を衝動的に殺害し、逮捕された後、留置所で自殺しました。

敬造の憎しみは、ルリ子を外へ出すきっかけを作った、夏枝と村井へと向かいます。同時に頭の中を「汝の敵を愛せよ」という教えが駆け巡ります。悩んだ末に敬造が選択したのは、生まれたばかりの佐石の娘を養女として育てるというものでした。この事実を知ったときの夏枝の苦しみを想像しながら・・・

事情を知らずに、夏枝は佐石の娘を「陽子」と名付け自分の娘として、ルリ子の分まで精一杯の愛情を込めて育てます。長男である「徹」も陽子に暖かく接し、彼女は明るく素直な少女へと成長していきます。けれど敬造だけは無心に陽子に接することができませんでした。

けれど陽子が7歳になったある日、夏枝は陽子が殺人犯の娘である経緯を知ってしまいます。そして夏枝は敬造と陽子への激しい憎悪を込めて、何も知らない陽子の喉へと手をかけるのです。

部屋主の感想

実に考えさせてくれる作品ですね。粗いところはけっこうあるのですが、それを補って余りあるほど考えさせてくれます。ただこの巻はまだ最初ということあってが以下に続く巻と比較するとやはり劣る感じがしますね。

というか、とにかく夏枝がムカつくんですよね。自己中心的な考え方しかしないし、成長はしないしで。敬造みたいないい旦那(こんな良い夫は滅多にいないと思う)がいるのに村井と遊んでるのも腹立ちますしね。

何よりムカつくのが、ルリ子が死んで49日もまだなのに、寂しいからと敬造に赤ちゃんをもらってきて(夏枝は子どもをもう産めないので)と言うところと、再び村井に迫られてる場面は反吐が出ます。

自分のせいで娘が死んだことに対して悩みもしないで、そこから逃避しようとするその思考方式が許せません。きっちり自分と向き合えといいたい。自分のとった行動の責任くらいとりやがれって感じえす。

その点、敬造は素敵ですね。何につけれも必要以上に悩んでる感じがして、部屋主とよく似てるのですよ。かなりな共感をおぼえます(前にこの本を読んだ6年前は最低の鬱状態の時で、この小説のおかげでもっと落ち込んだものです。で、その後の部屋主はこの小説に影響を受けてるので似てくるのは当然といえば当然かもですが)。

犯人である佐石よりも自分の方が劣る人間ではないかと悩んでみたり、本気で「汝の敵を愛せよ」という命題について悩んだり、それでいて夏枝への憎しみで養女をひきとってしまったりと、非常に人間臭くて。ただこの村井よりも犯人よりも、愛していた夏枝の裏切りが敬造には耐えられず、より大きな悲劇を生んでいく様は読んでいて心が痛いです。

他にも、陽子の優しさをみて自分がいかに非道なのことをやったのかと落ち込んだりするあたりもいい感じです。とはいえ、夏枝と村井の関係をはっきりと問い詰めない態度は少々イラついたりもしますが。

あと、夏枝のイジメに耐える陽子がいい子なのがベタですがグッときますよね。

この本の部屋主のグッときた言葉

光を失って、ながめる全ては暗黒であった

ルリ子が死んで間もないのに、再び訪れた村井に夏枝がキスマークをつけられたのを見つけた敬造の心象です。

これの前の「夏枝の背信が、敬造の生きる希望を奪ったのだ」や、続く「夏枝を殺して、共に死のうか」という敬造のつぶやき、そして「生きる責任、行き続ける責任が、多かれ少なかれ、社会人として敬造にも負わさせれていた」あたりも読んでいて痛いですね。

最近の世の中は、こんな風な背信に満ち満ちていると感じます。人を裏切るということはどれほどの苦痛を生み出すかということを、もっと考えねばならんと思いますね。

この本から部屋主が選ぶ格言

大ていことはできますよ。しかし自分の敵を愛することは、努力だけじゃできないんですね」by敬造の師匠(夏枝の父)

これができればこの世から争いがだいぶ減るんでしょうね。でもきっと無理でしょう。そもそも敵を愛する必要があるのかも問題ですよね。難しいです。

過ぎ去った時間だけは神でも取り返すことはできない」by夏枝の読んだ本

神様がいるかどうかは知らないけれど、過ぎ去った時間を人間が取り返すことは不可能でしょう。だからこそヒトは現在に責任をもって行動しなければならないと思います。

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コメント

何度もテレビ化、映画化されている名作ですね。
特に初のテレビ化作品(新珠三千代が夏枝、内藤洋子が陽子役)は大評判になって(最終回の視聴率が42.7%!)、私もかすかに覚えています。

私、随分昔に原作にも挑んだことがありますが、途中で挫折しています。なぜかは忘れましたが、メロドラマ的展開やキリスト教臭についていけなかったんでしょうか。
シンさんのレビューを見てまたチャレンジしたくなりました。

投稿: じっちゃん | 2007年2月 8日 (木) 04時09分

>じっちゃんさん
私が見てたのは前回の「石原さとみ」の2夜連続2時間ドラマバージョンのと何年か前に「末長はるか(だっけ?)」が主演してドラマバージョンですかね。

確かにメロドラマ的展開、不必要なシーン、回収しきれてない複線といった感じの粗い部分がかなり多いのですが、それを補ってあまりあるほと考えさせてくれる作品だと思います。

ただ、「罪」「罰」「許し」といったキリスト教的なものを意識できるかどうかが、読めるかどうかの重要なポイントになるかもというじっちゃんさの考えはポイントかもしれませんね。
こういう概念は人に普遍的に認識できるものかとも思ってたりもしますが、私の場合、幼稚園がミッション系だったので、人生の初期の段階でキリスト教に触れていたことや、学生時代に多少は宗教について学んでいたので、すんなり受け入れられたという部分があるのかも知れません。

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 8日 (木) 04時53分

小説は読解力に乏しい私には、かなり難易度の高いもので、最近はめっきり読まなくなってしまいました。
腹が立つような登場人物が出てくることが多いので、イライラしてしまうというのも読まない理由のひとつなのかもしれません(笑)
この小説も難解な人物が登場するようですね。
シンさんの感想がとても面白かったです。
小説の中には色々な人生訓があるのですね。それもわかってとてもためになりました。

投稿: みえこ55 | 2007年2月 8日 (木) 07時34分

>みえこ55さん
またまたご謙遜を^^
仮にそうだとしても読んでるうちに
きっと読解力は上がりますので是非。
小説は腹の立つ展開、腹の立つ登場人物も多いですが
話を盛り上げるのにそれはある程度仕方ないことかもなので
そのへんはご了承くださいませ。
これはだいぶマシな部類に入ると思いますし。
と、感想を褒めてくださって感謝ですm(__)m
頑張ってかいた甲斐があるというものです♪
と、この小説は非常に多くのことを考えさせてくれると思うので
機会があればためしに読んでみてくださいね。

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 8日 (木) 09時10分

>そこから逃避しようとするその思考方式が許せません。きっちり自分と向き合えといいたい。

私に言われている気がしました。
ちゃんと考えられる力を、もっともっと養わなければなりませんね。
自分のしたことから逃げない、そんな。

長編小説は最近どうも敬遠しがちなのですが、時間が出来たら読んでみたいと思います。
宗教色の強い作品に興味を持たせていただきましたから。

投稿: ルル | 2007年2月 9日 (金) 03時46分

>>ルルさん
>私に言われてる気がしました
実はこれ自分への戒めだったりするんですよね(^^;
どんなときも自分のやったことと向き合う。
そしていつかは、自分のやったことから逃げない、
さらに責任を負う強さが欲しいと思っています。

あと、この物語は全部で4冊にわたる長編小説ですが内容の薄いところはけっこうスカスカなので、意外にあっさり読めたりします。
なので時間がと機会があれば是非どうぞです^^

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 04時18分

あぁ、ついに『氷点』ですか・・・。
名作だけにストーリーは知っていますが未読です。
本も持っていますが未読です。
あまりのヘビーさに読みはじめる決心がつきません。
特定の信仰はありませんが
聖書はおおむね通読していますし
遠藤周作や曾野綾子は愛読してきましたので
そこの部分は抵抗なく読めるとは思うのですが・・・。

投稿: 月下 燕 | 2007年2月10日 (土) 03時26分

>月下燕さん
ついに氷点であります。
ストーリーを知ってると重さがわかってると思いますが
これほど重い話はなかなかないと思いますよ。
特にキリスト教的な世界観を理解できると
(個人的には理解できなくても大丈夫だと思いますが)
人によってはかなりのダメージを負うと思います。
作者は一応の解決を提示してはいますが
私なんかはそれには納得できず、
初読からもう何年も悩んでいるような状態だったりです。
しかもこの悩みは自分を行動を通して
周囲にも迷惑がかかってる感じで。
デフレスパイラルのように自分を追い込んでくれます。
ですので、読むときはお気をつけて☆

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月10日 (土) 03時51分

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