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続 氷点 上

氷点 上」「氷点 下」に引き続き本日も「氷点」の感想です。

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Book 氷点 (続 上)

著者:三浦 綾子
販売元:角川書店
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部屋主の独断ランク:A

   作品全体ランク:

だいぶネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

自分が殺人犯の娘だと真実を、養母である「夏枝」から告げられた「陽子」は、これまで正しいと思っていた己の中にも存在する「罪」の可能性に気づき打ちのめされます。そして自分を責めたあげく服毒自殺をはかるのです。

幸い、降り積もった雪のおかげで陽子は一命を取り留めることができました。やがて目を開けた彼女を待っていたのは「殺人犯の娘ではない」という事実でしたが、それはさらなる苦悩のはじまりだったのです。

なんと陽子は、夫が出征中の不義の末に生まれた子どもだったのです。不義によってうまれた子という事実は陽子にとって、殺人犯の子どもであること以上に宥しがたいものでした。命は助かったものの、陽子は別人のようにふさぎこんでしまうのです。

一方、「徹」は陽子の実母「三井恵子」と会い、陽子の自殺の経緯を語ります。それにより大きなショックを受けた恵子は交通事故を起こし重症を負ってしまうのです・・・

部屋主の感想

この巻は徹がなかなかに熱いです。事故を起こした徹が、これまで自分が正しいからと人を責めてきたことの苦悩を陽子に語る場面があるのですが、そこなんかが好きですね。部屋主も人を責めるタイプなので共感をおぼえました。

同時に、彼同様に、正しいからと責めることはどうなのかとかなり悩むようになりました(初読当時)。そもそも自分が正しいと思うこと自体傲慢極まりないからです。なのに、責めずにはいられないから→責める→自己嫌悪→責める→自己嫌悪、といった具合のスパイラルに落ちるわけであります。で、どんどん落ちていって未だにそこから抜け出れない感じです。

また、徹に関しては、陽子に母親である恵子を許してあげなさいと言いつつも、自分が夏枝の姦通の結果産まれた子だとしたら、きっと許せないだろうという自己欺瞞に気づくあたりも好きだったりします。

他には、啓造が陽子に聞かせた、なぜキリスト教が全ての人間を罪人だと扱うのかの理由もあたりもいいですね。人は意識にのぼらないだけで、うそを言った・腹を立てた・憎んだ・悪口を言ったといった様々な小さな罪を犯してるというのがソレです。まったくもって部屋主もそう思います。

ここでは、意識できてないというのポイントでしょう。ゆえに意識するためにはしっかり考えることのできる能力を養わなければと思います。ただ、罪を意識すると人生辛いことだらけな気がするんですよね。部屋主の場合、何をやるにしても罪の意識を感じてしまって、かなり生き辛いです。

だいぶマシになったとはいえ、夏枝のムカつきっぷりは健在です。陽子が「佐石(殺人犯)」の娘でないとわかったのでいじめはなくなるのですが、陽子が自殺騒動の後にふさぎこんでる様を、まるで自分を責めてるようだとイライラしてるあたりは何様だと思いますね。自分が原因を作り、自分でそこまで追い込んでおいて・・・ほんとコイツは舐めてますね。

「続」のテーマの「ゆるし」に関してはまたラストになる次巻でまとめてつぶやきたいと思います。

この本の部屋主のグッときた言葉

殺人犯の佐石の子として生まれたほうが、よかったとさえ、陽子は思った。佐石夫婦に、喜びを持って迎えられた命のほうがましだった。少なくとも、裏切りの中に生まれなかっただけでも、しあわせのような気がする

どっちの方がシアワセなのでしょうかね・・・実生活上なら殺人犯の子どもの方が苦しいとは思いますが。というか裏切りの中で子どもを産む親が少なくことを祈ります。

人間って、じっと身動きもしないで山の中にいたとしても、本当にどうしようもない、嫌なものをもっているとわかったわ」by陽子

だと部屋主も思います。わかると陽子の辛さが伝わってくる思います。皆様はどうでしょうか。

とにかく人とかかわることがこわいのよ。どんなふうにつきあっても、結局は傷つけてしまうような気がするんですもの」by陽子

一瞬自分自身の言葉かと思ってしまったりです。自分が傷つくのは嫌です。でもそれ以上にヒトを傷つけることが怖いです。ただ部屋主はヒトを傷つけずにいられないタイプの人間だったりするので非常に困ります。

この本から部屋主が選ぶ格言

自分で自分を叱ればいいのに。自分に甘い人間に限って、叱られてみたいなんていうのよ」by辰子

だと思います。だから自分にはできる限り厳しくいきたいと思っています。ただ自分に厳しくいくと人にも厳しくなるので困ったものです。しょせんは自己満足なのに人を巻き込んでしまう・・・やれやれです。

ゆるすって、人間にできることかしら?」by辰子

ほんとそう思います。とはいえ、これができればどれだけの争いが減ることか。ただ、世の中には許してはいけないこともあると思うんですよね。となるとますます難しく・・・ううむ。

考えてみると、人間関係はかなりあやふやなものの上になり立っている」by啓造

確かにその通りですよね。あやふやなものの上に、さらにあやふやなものを重ねてるのが人間関係なのだから、脆いのは当然といえば当然ですよね。だからこそ人は誠実にせねばならんのでしょう。そう思います。

「わたしたちは若いのよ。若い者は潔癖な怒りを知らなければいけないと思うの」by陽子

自分のの出生に関して肯定しようとする徹への陽子の言葉です。部屋主もそうだと思います。他のあらゆることでもそうだと思います。

不幸を知らない人に真の幸せは来ないわ」by順子

そうであって欲しいと思うのは部屋主の心が狭いからですかね。

時効は法律上の問題よ。良心に時効があってはならないと思うの」by恵子

陽子のことを徹に知らされ、自分の忘れていた罪を思い出し、自分を責めはじめた恵子を、徹が慰めようとしたときの恵子の返事です。まったくもってその通りだと思います。

仕方がないから許すということではないと思うの」by陽子

そう部屋主も思います。この世には決して許してはいけないものもあると思うからです。

自分1人ぐらいと思ってはいけない。その1人ぐらいと思ってる自分に、たくさんの人がかかわっている。ある1人がでたらめに生きると、その人間の一生に出会う全ての人が不快になったり、迷惑をこうむったりするのだ。そして不幸にもなるのだ」by夏枝の父

祖父が陽子に言った言葉です。実に含蓄のある言葉ですよね。その通りだと思います。だから人はしっかりと考えて行動せねばならないと思います。

一生を終えて後に残るのは、我々が集めたものではなくて、我々が与えたものである」byジェラール・シャンドリ

これも祖父が陽子に言った言葉です。上同様に含蓄のある言葉ですよね。自分が今まで人に何を与えてきたかと思い返すと、傷であったり、迷惑だったりといったろくでもないものしか浮かばない部屋主自身に辟易としますね。

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コメント

こんばんはー。
うーむむむ。。。。
ますますおもしろそうな展開ですね。
でもこうやってあらすじを読んでおくと
こんな長編小説の場合、読む気になりやすいんですよね。
どこまで読んでもおもしろくなかったらどうしよう。。。
という不安があってなかなか長編は読む気が起こらないんですよね私。
とても参考になりました!

投稿: mixbabar | 2007年2月13日 (火) 00時03分

>babarさん
この長い記事を読んでコメントくれ感謝ですm(__)m
氷点の記事は書くのに実は何時間もかかってたりするので
コメントないとほんと凹むんですよね(^^;

あらすじはどこまで載せるか毎度悩んでいるのですが
この小説は物語よりも登場人物の心や思考の変化が
読者に与える影響が楽しいのでだいぶネタバレな記事になってます。

そうやって読む気になってくれてとてもうれしいです。
まだ頑張れると思えますm(__)m

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月13日 (火) 01時46分

シンさん、すっかり『氷点』シリーズにハマってますね。
う~ん、なんだか私も読みたくなってきました。

投稿: じっちゃん | 2007年2月13日 (火) 04時55分

>じっちゃんさん
コメント感謝ですm(__)m
かなりハマっております。
鬱のときに読むとさらに鬱になって困るといえば困りますが
アンテナがいつも以上に敏感なので
得るものは多かったと思います。
じっちゃんさんもよかったら読んでみてくださいね^^

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月13日 (火) 08時20分

「罪を意識すると人生辛いことだらけな気がするんですよね」
というのは私自身も実感します。
私の知り合いで、やたら反省してばかりいる人がいましたが、精神的な疾患になってしまったのです。
しかし、よく観察してみると、反省しなければならないことでは反省していないのが気になりました。
「自分1人ぐらいと思ってはいけない。その1人ぐらいと思ってる自分に、たくさんの人がかかわっている。ある1人がでたらめに生きると、その人間の一生に出会う全ての人が不快になったり、迷惑をこうむったりするのだ。そして不幸にもなるのだ」
この部分がとても、その病気になった方とかぶるせりふだなあと感じました。

投稿: みえこ55 | 2007年2月13日 (火) 10時01分

>みえこ55さん
じっくりと記事を読んでくれた上でのコメント感謝です。
とても嬉しいです。
その知人さんと私の姿がどうにも被りますね。
違いはただ、この言葉の意味を知ってるか知ってないかでしょうか。
いっそ私も精神を病んでしまった方が思うことが多々ありますが
なんとか踏みとどまってられるのは色んな方のおかげかと思います。
それとも、そういうのを知った上で
病まずにいられないほどの何かがあったんでしょうか・・・
どちらにせよ、そういう方は同類だと思うのでやるせないです。

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月13日 (火) 12時13分

シンさんと私の知人とはだいぶ違うような気がします。シンさんの日記をいつも見ているからわかるのですが、シンさんは物事をとても正しく見ていると感じるからです。
病気なのはシンさんではなく、周りの変な人なのではないかなと思ったりもします。
色々つらいときもあるかもしれませんが、きっと晴れ間が見えることを信じてくださいね。

投稿: みえこ55 | 2007年2月13日 (火) 14時51分

>>みえこ55さん
再びのコメント感謝です。
と、応援感謝であります。

>物事をとても正しく見ている
まだまだ若輩者ですが、これを目指しているので
そういっていただけるととても嬉しいです。
私も実は自分のことが正しいと思ってることがあったりするのですが
この小説でもあるように(今夜アップされる「下」にあります)
自分を正当だと思うことの傲慢さや醜さを知ってしまうと・・・
また、正しいことが必ずしも幸せにつながらないといった問題も
発生してくることもあったりで弱りますね・・・
ほんと人間の心や社会は難しいです。
でも、みえこ55さんのおっしゃられるように
きっといつかは晴れ間がでるようにと頑張りたいと思います^^

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月13日 (火) 15時17分

なかなか考えさせられる作品ですね。
じっくり読んでみたいです。

許すって難しいですよね。
許すことが出来れば、楽になれるのかな?
自分が成長したって事なのかな?
なんて考えたりしますが、
必ずしも、それが正しい答えではない場合も
あるような気もしますし・・・
でも、許すことは大切な事だと思うし・・・ジレンマです。(> <;)

投稿: caren | 2007年2月13日 (火) 15時33分

>carenさん
ほんと多くのことを考えさせてくれる良作だと思いますので
よかったらじっくりと読んでみてください。

許すってほんと難しいですよね。
carenさんがおっしゃってることあたりも
今夜の「下」の記事で触れてますが
ほんとにジレンマです。
許したつもりでも許せない。
はぁ、人間って難しいですねぇ・・・

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月13日 (火) 16時21分

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