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氷点 下

」に引き続き「下」の感想です。

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Book 氷点 (下)

著者:三浦 綾子
販売元:角川書店
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部屋主の独断ランク:A

   作品全体ランク:

だいぶネタバレ注意です。

あらすじらしきもの

大切に育ててきた養女「陽子」が、自分の娘「ルリ子」を殺したの犯人の娘だと知った「辻口夏枝」は、夫である「敬造」と陽子への恨みを抱えならが、陽子を虐めはじめます。

何も知らない陽子は、優しかった母がなぜ自分に嫌がらせするのかがわかりません。それでも陽子は必死に頑張って真っ直ぐに成長していきます。

そんなある日、敬造は海難事故に巻き込まれます。そこで彼は、自らの救命具を他人に譲って死んだ宣教師の行為に心をうたれキリスト今日の世界に惹かれるようになります。それでも敬造は夏枝を許せず、陽子に対しても自然な愛情が持てませんでした。

夏枝も心の揺らぎはあるものの、陽子に対する憎しみを消すことができません。そして、陽子が中学を卒業する時、彼女が卒業式代表として行う答辞を白紙にすりかえるとという行為を犯してしますのです。

家族の中でただ1人、長男の「徹」だけが陽子を心から愛していました。けれど、その想いが男女の間のものであると危険を感じた徹は、友人の中でも信頼のおける「北原」を陽子に紹介することを決めます。

次第に近づいていく陽子と北原に嫉妬する徹、そして夏枝・・・それはやがて陽子の出生の秘密の暴露へと続いていくのでした・・・

部屋主の感想

実に考えさせられますね。この巻は海難事故から生還した敬造がキリスト教に惹かれるところからはじまるのですが、そこでまず考えさせられます。

荒波の中からなんとか生還してきたものの、夏枝への憎しみが消えずにいる自分を敬造は責め続けます。なぜかというと、こういう醜い感情にとらわれている自分が生き残って、他人に救命具を譲って死んでいったこ素晴らしい心の持ち主である宣教師が死んでしまったことがわびしかったからです。

よくわかりますねこういう感情。部屋主もこういう風に思うことがよくありますので。友達が病死したり自殺したときはつくづくそう思ったものです。

敬造に関しては他にも夏枝と村井を疑うその弱さも似てたりするんですよね。部屋主もこういう風に疑心暗鬼になるタイプなので。ただまぁ証拠を掴んでるのにこの態度はいかんと思いますね。

徹が父と母の秘密を知った時の反応はいいですね。正論でもって2人をやり込める辺りが素敵です。敬造と夏枝の醜さがよくわかります。他にも、陽子が好きなあまりに北原を紹介したけれど、それを悩む姿がまた素敵です。

にしても夏枝のムカつき具合は相変わらずです。村井から少し距離を置くのも、村井に近づくたびに、ルリ子が殺されたり、敬造が事故に巻き込まれたりととろくなことがないといった理由だからです。ちゃんと反省しやがれと思います。

陽子に対する仕打ちも実に陰険ですし。北原を誘惑するあたりほんとに最低です(これおぴしゃりとやり返した北原は素敵ですね。部屋主だったらしてやられてる可能性大ですが)。

陽子に関してはとにかく良い子すぎてちょっとひきますが、やはりホロリとくることが多いです。答辞がすりかえられたときときの返しはお見事でした。こういう臨機応変な人間になりたいものです。

そしてこの小説のメインテーマである「」の問題ですが、非常に重いです。陽子は自分がずっと正しいと思っていたから、どんな時でも頑張ってこれました。しかし、自分の中に罪の可能性を見出しとき、彼女は立つ場所を失い、ある行動をとることになります。

部屋主は決して正しい人生を歩んできたと誇ることはできませんし、陽子のような出生に関することもないですが(たぶん)、自分の中の罪を発見して以来、もう何年も自己嫌悪の渦の中にいます。そう考えると、陽子がその行動をとってしまうのも仕方ないと思います。

この罪に関する答えは、次の「続・氷点」へと持ち越されますので、今回の感想はこのへんで。

この本の部屋主のグッときた言葉

愛するというのは・・・・・いったいどうすればいいんだ」by敬造

陽子をなんとか愛そうとする敬造が、陽子を初めて「抱っこ」し、妖しい魅力を感じてしまったときの自嘲です。ほんとどうすればいいんでしょうね。部屋主もこういうのがわからない人間なんで・・・愛って何なんでしょうか・・・

ゆえに、簡単に「好きだ」だの「愛してる」だのとというヤツはきっと詐欺師が嘘吐きだと部屋主は思っております。で、こういう言葉を簡単に口にする人間に方がもてたりするんで凹んでたりです。

責任感が強いというのとはちがっている。小心者なのだ」by敬造

つくづく部屋主と敬造って似てるんですよね。こう思うところもそっくりです。責任感が強い人間だと思ってたけど実際は小心者だったということを、ここで再確認させられて凹んだものです。

結局は、その人もかけがえのない存在になりたかったのだわ。もし、この人を誰かが真剣に愛してくれたなら、その人は死んだろうか」by陽子

退院間近、全てが虚しくなって死んだ敬造の患者「正木次郎」をおもっての台詞です。彼の遺書には「結局人間は死ぬものだ。正木次郎をどうしても必要だといってくれる世界はどこにもないのに、うろうろと生きていくのは恥辱だ」とありました。この死で敬造と陽子は色々と考えるのですが、そこも実に考えさせられます。

変わるとも変わらないとも断言できませんよ。今は一生変わらないつもりでいますけれどもね。あくまで、つもりですよ。でも口に出して永遠に僕の気持ちは変わらないなんて言えないなぁ。だから結婚の約束も僕はしませんよ」by北原

部屋主もこう考えて生きてます。これが誠実だと考えているからです。この小説では陽子は北原のこの態度を誠実だと思いました。部屋主もこれを実生活で実践してますが、普段から誠実でない人間だとダメみたいです。

この本から部屋主が選ぶ格言

「写真なんか見たってその女性の何がわかりますかね。会って見たって、わかりゃしませんよ。三ヶ月や半年ぐらいつきあったって、お互いにごまかせますからね。いいとこばかり見せ合うようですからね。~結婚して何十年たってもわからない。人間ってそんなところがあるんじゃないですか」by村井

高木からお見合い勧められた村井がその返事として出した台詞です。実に面白いですね。確かにその通りだと思いますし。だから村井は結婚なんてこんなもんでいいと、面識のない女性と結婚するのですが、やはり部屋主は本当にじっくり考えてから結婚はした方がいいかと思います。

なぜなら離婚した場合、当人同士はよくてもその子どもが非常に迷惑がかかるからです(まぁじっくり考えた上でしても離婚はあると思いますが、やはりこっちの方が確率は下がると思います)。部屋主はバイトがらそういう子どもたちと接する機会があるのですが、親が離婚してる子どもたちが問題を抱えてることは多いです。

そういうわけで皆様結婚はよく考えてお願いします。

自分が悪くなったのを人のせいにするなんていやだったの。自分が悪くなるのは自分のせいよ。それは環境ということもたしかに大事だけれど、根本的にいえば、自分に責任があると思うの」by陽子

いやまったくその通りですね。同じように劣悪な環境にいても曲がる人と曲がらない人がいるわけですから。あらゆることは自己責任、そう思って頑張りたいとこです。

自己中心とはなんだろう。これが罪のもとではないか」by敬造

でしょうね。でもこれをどうすればよいのでしょうか。難しいです。

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コメント

こんばんはー。
氷点、おもしろいってよく聞きますが未読なんですよねー。
シン殿もランクSですか!
これはぜひとも読んでみたいものです。
毎度おもしろそうな本をご紹介いただきありがとうございます。
大変参考になりますー。

投稿: mixbabar | 2007年2月 8日 (木) 23時34分

>babarさん
こんばんは。
気合入れて書いた記事だったんですが
誰もコメントくれずでだいぶ凹んでたんですよ。
コメント感謝ですm(__)m

この小説、面白いという点に関しては粗い所がけっこうあったりです。
とはいえ、考えさせてくれるという点では
相当なものがあると思うので機会があればどぞです。
ただ人によっては私のように鬱になるかもですが(^^;

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 00時14分

愛する方法なんて、きっと誰しもはっきりとわかってないと思います。

それを愛と認識できるかどうかの問題。
そんな気がします。


いやはや、それにしても面白そう…
今は読書にあまり時間が避けないのが残念です。。

投稿: ルル | 2007年2月 9日 (金) 04時00分

前言訂正です。。

認識できる、というより何を以って愛とするかですね。

愛という概念を持っていない人は、きっと愛を感じることが出来ないし、愛することもないんでしょう。
自覚の問題ですが。

同じ行為をしていても、愛という概念を持ってさえいれば、愛し愛されていると感じられるのでしょう。

肝心のどうすればその概念が手にはいるのか、っていうところはまだまだ若輩者にはわかりかねますが…


以上、戯言でした。。。

投稿: ルル | 2007年2月 9日 (金) 04時17分

>ルルさん
面白いかと問われると微妙って思うところもありますが
かなり色々と考えさせてくれる作品ですので
また時間のあるときにでもお手にとってくださいませm(__)m

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 04時25分

>ルルさん
ううむ、何を持って愛とするかの概念ですか。
面白い考え方ですね。

こういう考え方をするのであれば
私の場合、その概念の幅が異常に狭いのだと思います。
というかあえて限定してるのだと思います。
そしてそれ以外のものは自分も含め認めないので
結局は理性が拒否するという感じなのかと。
だからわからない。
また、同じ行為をしていても、
それに愛を感じてはいけないと思ってる節がありますね。

私もまだまだ若輩者ゆえなんとも微妙なお返事ですいません。

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 04時36分

確かテレビの宣伝で見ました(*^^*)
怖い感じのストーリでした。
セリフのひとつひとつに、深い意味が込められている気がしました。

投稿: みみこ | 2007年2月 9日 (金) 05時55分

>みみこちゃん
TVの宣伝はけっこう大々的にやってましたもんね。
私もかなり見た気がします。
ストーリーは確かに怖いものです。
ホラーとかとはまた別の種類の恐怖ですが。
ただ、一つ一つの台詞に実に奥深さがあって
非常に考えさせられるいい小説だと思います。
ただ、みみこちゃんの年齢を考えると
その時期にこれを読むのはちょっと刺激が強いかな
なんて思ってしまいます。
テーマが人間の「罪」「罰」「ゆるし」ですから(^^;

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 06時04分

おじゃまです。
氷点ってよく聞いて
有名どころなのは知ってましたけど
内容は全然知らなかったんですわ~

結構ドロドロした愛憎劇だったんですね。
こりゃ精神的に余裕がないと引き込まれそうですよ。

愛って錯覚と思い込みじゃないんでしょうか。
それを持続させるのも一つの能力ですよ。
↑私は持続能力が乏しいですから、
一途になれる人はある意味凄いって思います。

北原は交渉術にはたけてると思いますけど、やっぱりズルイですわ
『自分はこうだけどそれでも良いんなんら・・・』
っていう感じですよね。
相手もこう言われちゃうと
なかなか決断できないもんですよ。
こう言う人を好きになると
ズルズル行っちゃいますから、
厄介ですわ~^^;

投稿: たまの猫 | 2007年2月 9日 (金) 12時24分

>>たまの猫さん
こんにちは^^

>ドロドロした愛憎劇
肉体的なものはないので
そういう面ではけっこうあっさりとしています。
ただ精神的に弱ってるときは引き込まれますよ(^^;

>愛って錯覚と思い込み
たまの猫さんもそう考えておいででしたか。
私もそういう風に思ってたりします。
でもそう考えると持続力も何も
最初からどないなんって悩んでしまうんですよね。
だから一途な人って阿呆だなと思いながらも
うらやましかったりと複雑だったりです。

>北原はずるい
ですかねぇ(^^;
私は誠実だと思うだけどなぁ。
確かにまぁ少しずるいかもとは思いますが。
ちょっと自分を見つめなおしてみます。

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 14時19分

ずっと気になっていた本ですが、シンさんのレビューを読んで
ますます読んでみたくなりました。

>自分が悪くなったのを人のせいにするなんていやだったの。
>あらゆることは自己責任、そう思って頑張りたいとこです。

ホント、そうですよね。私も頑張らねば。(*^-^)

投稿: caren | 2007年2月 9日 (金) 18時33分

>carenさん
そう言ってもらえるととても嬉しいです(^-^)
非常に考えさせてくれる作品ですので是非!
お互い色んなことを自己責任で頑張りましょう♪

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 19時18分

こんばんは。
『氷点』高校生の時くらいに読んだ気分になってましたが、レビューを読んでると、どうも最後までは読めてない気がしてきました。
実家にあるのはわかってるので、今度帰った時に探って持ち帰ろう…

こういうずっと読まれてきてる作品というのはやっぱり力がありますよね。そう考えると読んでない本があまりに多すぎて、嬉しくなるやら悲しくなるやら。

投稿: ちきちき | 2007年2月 9日 (金) 20時33分

>ちきちきさん
こういう考えさせてくれる系の小説は
読む側の能力を要求してきますので
読む時の人間力やそのときの精神状態で
ずいぶん得られるものが全然違ったりですよね。

時代は変われどいいものはいいですね。
というか人間が成長してないといえばそうかもしれないですが、
テーマが時代をこえて人間の本質に食い込んでるからかと。
私も昔「なんとなく」読んでいた文学小説を
もう一度読み直してみようかと思っています。

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月 9日 (金) 22時34分

未読作品なのであまり断定的なことは
言うべきでないのですが
愛のない不実な結婚生活を続け
自分と娘の生涯を
くらい復讐心を満足させるために費やすなんて
敬造君には言いたいことがいっぱいあります。
悩んだり考えたりすることが小賢しいエクスキューズに
しかなっていないのは腹立たしいです。
なんか、不愉快な登場人物が多そうなのです・・・!
ぼく自身は誰に感情移入して読むのかなと思いました。

投稿: 月下 燕 | 2007年2月14日 (水) 01時20分

>月下燕さん
啓造が陽子の一生を壊したことは間違いないです。
ですが「汝の敵を愛せよ」という教えも頭にあったことも確かです。
また、啓造が夏枝への愛がなかったとは思えない感もあります。
とはいえ、啓造に腹立たしさを感じる
月下燕さんの考えも理解しています。

で、私はこういう啓造の弱さや不誠実さ、
常に小賢しいエクスキューズで自分を守るといったところが
妙に自分と似てる感じで彼に感情移入して読むことが多かったです。

投稿: シン@部屋主 | 2007年2月14日 (水) 04時09分

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