ブログ「たま店長のオススメ本」の管理人でブログ友達の「たまの猫」さんのところで、少し前に知り合いになった、ブログ「じっちゃんの誤読日記」の「じっちゃん」さんの書評を読んで、かなりこれはツボっぽいと思ったので購入を決定しました。
多少ネタバレ注意です。
あらすじらしきもの
第二次世界大戦から約10年、山間にあり古い因習に閉ざされた「神々櫛村(かがくしむら)」では、憑き物筋であり「黒の家」と呼ばれる「谺呀治(かがち)」家と、「白の家」と呼ばれる「神櫛(かみぐし)」家という2つの旧家が対立しています。
神々櫛村では、「カカシ」様が山神様として信仰されており、村の各家、村の要所々々にはカカシ様が祀られています。また、この村では、カカシ様にそっくりな厭魅(まじもの)が出ると信じられているので、逢魔が刻以降に村人は外出を控えます。そして、それを裏付けるかの如く、村では神隠しが度々発生しているし、憑き物にいたっては頻繁に起こっているのです。
そして、この憑き物を落とすのが、谺呀治家に必ず生まれる双子の巫女なのです。現在の巫女は、谺呀治家の当主である「叉霧(さぎり)」とその孫である「紗霧(さぎり)」です。
巫女は代々「さぎり」の名をつけられ、本来なら双子が「拝み所」と「祓い者」とに分かれて憑き物を落とすのですが、叉霧の妹はすでに他界、娘の1人は病弱、もう1人は気が狂っており、そして、紗霧の双子の姉で、子供とは思えないほどの人格を持ち、早熟の天才だった「小霧(さぎり)」は、巫女になるための儀式中に、「カカシ様になった」と、すでに死亡しているので、現在は叉霧と紗霧の2人がその仕事を担っていたのでした。
叉霧の力に衰えが見え始めていたある日、白の家の人間で紗霧の幼馴染の「千代(ちよ)」が何かに憑かれたと、谺呀治家を訪れます。黒を忌み嫌う白の家の中でも、婚姻を巡るかつての因縁から、ことさら黒を嫌う千代の母「千寿子」ですが、憑き物があまりに強力だった自分たちではどうすることもできなかったのです。
叉霧は、白の千寿子に対し毒づきながらも、山神様を「憑座(よりまし)」である紗霧に憑依させ、憑き物を落とそうとしますが、山神様が憑いた紗霧の口から出たのは「ふつうのつきものではない」「いきりょう」「さぎり」という言葉だったのです・・・
娘に憑いていたのは紗霧の生霊だったという結果に怒る千寿子ですが、紗霧は自らの生霊をそれと知らずに巫女の仕事として、それをいつもの憑き物を落とした時の様に、忌み山の川に流しに行くのです。しかし・・・
翌日、叉霧は床に伏してしまい、谺呀治家ではこれを機に家を乗っ取ろうとする不穏な企みが静かに進行していきます。けれど、その計画に加担していたある人物が、カカシ様の格好をした首吊り死体として発見されるのです。
さらには、第二、第三の怪死事件が次々と発生するのです。しかものその全ての死がおよそ人間業ではなく神の祟りによるといった類のもので・・・
この時、日本各地の怪異譚を蒐集するために村に滞在していた怪奇幻想作家の「刀城言耶(とうじょうげんや)」は、かつて忌み山を侵し恐怖を体験したことがあり、村の古い因習に反発を感じている紗霧や千代の幼馴染である白い家の「漣三郎(れんさぶろう)」とともに、この連続怪死事件へと挑むのです。
部屋主の感想
あらすじが長くなりすぎてしまいましたね・・・でも書いてるうちにこれも書きたい、あれは書いておかねばって感じで長くなりました。まとめる能力が足りなくてすみません。最初にあやまっておきます。
ということで、大まかな感想ですが、どんぴしゃのツボでした。民族ホラーと本格ミステリーがここまで見事に融合してる作品は滅多に見られるもんじゃないと思います。実に面白かったです。
次いで、恐怖度ですが、ちゃんと怖いです。ホラーは人並み以上に読んでる方だと思う部屋主ですが、怪談系や短編ならともかく物語としてちゃんと怖い作品ってけっこう少ないんですよね(経験上、怖いというより気色悪いという場合が多いです)。でもこの作品は怖いです。真綿で首を絞められるように、純日本的な恐怖がじわじわと迫ってきます。
部屋主としましては、紗霧が憑き物を流しに行った際に後ろを何物かにつけられる場面や、漣三郎が兄とともに忌み山に入ったときの場面(この2つは上記してじっちゃんさんも同じように怖かったそうです。というかこの感想の大部分がじっちゃんさんと同意見だったりします)、言耶が何物かに追われる場面が気に入りましたね。
しかもこれが、ミステリ作品としても一級品というすごさです。次々と発生する怪奇現象と怪死事件に、どうやって収拾をつけるんだ?本格ミステリと名乗りながら一般のホラー作品のようにお茶を濁すのか?大丈夫か?と読みながら思っていたのですが、著者は読者に不満を残さないレベルで「ほぼ」それらをきっちりとまとめてくれています。この「ほぼ」というのがポイントで、ここが「ほぼ」だからこそホラーとしての後味がしっかりと活きてきます。見事な演出です。
見事な演出といえば、「凝ってるといえば凝ってるけど読みにくいのでは?」と思って、「何でこういう演出なんだろう」と漠然と考えていたことが、最後の最後で語られるのですが、それがまた素晴らしい伏線だったりするのです。感嘆のため息が思わず漏れましたよ。言われてみて、それまで感じていた漠然としたもやもやが取れました。
さらに、そこに辿り着くまでの、謎を一つ一つ丁寧に解いていく過程も見事です。「それで解決してもいいやん」って思うようなレベルの謎解きが、どんでん返しされたりもしますからね。でもって、この解決に至るまでにも様々な伏線が張り巡らされているので驚きます。あれもこれも伏線だったんだという風に(とはいえ腑に落ちない点のいくつかあるのも確かです)。
ちなみに、いわゆる犯人というものに関しては一応は合ってました。恥ずかしながらあくまで漠然とこいつじゃねぇのってレベルでしたが。
また、↓の格言でも触れますが、過去に起こった神隠し等の事件も、きっちりと論理的・科学的に物事を考えれば決して不思議ではないといった風に、思考停止せずに物事を考えることの重要性と、それでも解決できないことがあるので人間は驕慢に陥ってはいけないというメッセージも盛り込まれている作品だと部屋主は感じました。そういう面でも評価できる小説だと思います。
あらゆる人にオススメしたいところですが、難しい漢字や言葉がけっこう多いので、普段本を読まない人には少々キツイかもです。字もページ数(約460P)も多いしね。とはいえ、日本人なら知っておきたい、否、知っておいて欲しい民俗学的な知識が散りばめられいるので、その手の知識がない人こそ読んで欲しいです。
もちろん部屋主のように、戦後の閉鎖された村(ちなみにこういう古いものとじょじょに消え新しいものが現れる時代ってのは恐怖の棲家として最適だと思ってます)、憑き物筋、旧家の対立、複雑に絡み合う血縁関係、神隠し、生霊、厭魅、忌み山、依代といった言葉に反応してしまうような人や、ミステリやホラー大好きという人なら迷わず読むべしです。
あと本編とは全く関係ないですが、この表紙の絵がすごい気に入っています。上についてるアフィリ画像だとイマイチですが、本を手にとると絵の少女が妙に艶めかしく、そして嫌な感じがします。で、それが本編の内容とうまくマッチしているように感じました。
部屋主がこの本から選ぶ格言
「最初から何も考えずに怪異を受け入れてしまう思考の停止は、人として情けない。かといって人知を超えたものなど存在しないと断じるのは、人として驕っている」by刀城言耶
この考え方は部屋主と同じなんですよね。言耶のこういった信条が部屋主と同じなのもこの作品の気に入った理由でしょうか。昨今のわけわからんことを言ってる占い師や、ニヤニヤとスピリチュアル的なものがどうたらと言ってる人を支えている人達にこの言葉を捧げたいですね。
人気blogランキングへ←ポチっと応援お願いしますm(__)m
←こちらもポチっと応援お願いしますm(_ _)m
最近のコメント